ためらいがちに「…なにか、聞いたのか?忍か?」と、父さんは言う。
……?
お誕生日ケーキのサプライズを晒す気はないので、ただケーキが食べたいのだとごまかした。
「あ?ああ。うん、あれは駅の裏にある山沿いの―――…」
地図の説明を頭ん中に叩き込む。
それは有名なホテルだったん。あんな豪華なホテルだったなんてビックリだ。
…予算足りるかな。
導かれるように、浮き足立った俺は工場から出ようとした。
―――が、
「…雅」と名を呼ばれる。
振り返るも父さんが話す気配はなかった。
「なんでもない。じゃあな」
「うん」
浮かれていたので動揺している父さんを気にするはずもなく、俺は自転車でホテルに向かった。
――この時、気付けていたならば、父さんに抗議していたならば、
何かが変わったのだろうか――…
俺は知らなかったんだ。
父さんの決断を。
未来が変わったかもしれないのに――



