狭い部屋に布団を並べ、ついでに肩も並べる。なんだかそわそわした。
頭をそろえて寝っころがると、もう足の先の位置が違う。背はいつの間にか追い越していた。
――守れる男に近づけている気がした。
恋人たちに似合う暗い部屋……
やっぱり俺は意識されていない。
寝ぼけたふりをしてキスなんてしたらどうなるのだろう、そんな事を真剣に考えていた。
「雅」
小さな鉄琴みたいな可憐な声。
「うん?」
「ありがとう」
「なに、が?」
何かが引っかかるんだ。姉ちゃんは“ここ”に居るのに、“ここ”に居ないみたい。
さっきから妙な距離感があるような気がする。そわそわする。
「誕生日、楽しみだな、何作ってくれるの?冷蔵庫あんまないよ、材料。
さっきのステーキとか嘘だからね?お姉ちゃん食欲ないし…」
胸のざわつきの訳が見えない。見たくないからだろうか。
「ん、まぁ姉ちゃんが喜ぶモンだよ」
不意に、白い手にそっと手を重ねられ、必要以上にビクっと身を縮めてしまった。
「手、貸して」
――声は小さくて。闇に見えない声。
どうすることのできない俺は、ただ手に込める力を強くした。



