白は花嫁の色


「高校行ったら雅モテるんだろうな」

「モテる為に高校行くんじゃないから、モテなくていいし」


――頭の良い西高校に行くのは、姉ちゃんの為だから。

頭の良い高校行って、いい大学入って、いい会社で働いて、お金をいっぱい稼ぐんだ。

王子様になれるように―――そのステップが高校進学なだけで。

モテる必要はない、ただ一人のお姫様に愛されるなら幸せだ。


「なんで、自慢だよ?モテる弟なんて」

弟の部分を姉に変えて返したら、嬉しそうに笑ってくれた。


――何もしない内から諦めたりなんかしない。

こうして誰も居ない夜に姉ちゃんを独り占めできるのは、俺だけなんだ。


「頑張って、絶対頑張ってね?…私ずっと応援してるから」

「何?急に……」

「ううん、ちょっと。言っておきたかった、西校倍率高いでしょ」


なんだか卒業式のお別れのような言い回しに思え、少し不安になる。

が、明後日に迫る誕生日が楽しみすぎて、小さな変化を見逃していたんだ。




風呂から出ると姉ちゃんが台所の机に居た。内職のシールを貼る手は止まったままだ。

「姉ちゃん?」とためらいがちに声をかけると、「あ、もう寝る?」と、ぼんやりとした返事をされた。

十二時過ぎたからもう寝ようとする俺に続き、自分も寝ると言う。

“朝夜逆転だから生活リズムを直したいのだ”という発言も、

“明日は休みだから実や椿と遊ぶのだ”という意思表示も、――何も違和感がなかった。

だから、きっと俺の気のせいだ。


小さな箱にファスナーの金具をしまう、その手つきは繊細で美しい。