「…姉ちゃん、明後日誕生日だろう?晩ご飯俺が用意するからさ、期待しといてよ?」
本当はサプライズのつもりだったけれど、元気になってほしくて言った。
今すぐ笑顔にしてあげないといけないと思ったから――
けど、姉ちゃんは黙ったまま空を見上げる。
……首に向けてえぐれた顎のラインが綺麗。
―――反応のない姉ちゃんは月を見上げたまま。そこに俺は居ないから、ちゃんとこっちを見てくれないと。
「姉ちゃん?」
小さく名を呼ぶと、姉ちゃんは「あ、うん!楽しみ」と、いつも通り笑った。
つられて俺も笑った。明後日が楽しみだ。
―――姉ちゃんの笑顔は作った笑顔なのに、この時の俺は浮かれていて気付かなかったんだ。
愚かでしかない。
人生で一番後悔した夜になるなんて、想像もしていなかったんだから。
「姉ちゃん何食べたい?」
「んーっと、やっぱステーキじゃん?それでケーキはねー、ホールのね。シノブちゃんって名前でねー、丸いの。
なんかきらきらでフルーツいっぱいの、ほら雅覚えてないかな?一回食べたじゃん、すっごい豪華な……甘いやつ。ホテルで食べたよね?」
嬉しそうに話す姉ちゃんのお喋りに耳を傾けながら、ゆっくりと瞼を閉じる。
思考は暗い視界――



