俺が市井の家で世話になってから、ずっと姉ちゃんは、
“養子”だと分かる発言を絶対にしなかった。
なのに今、遠回しに“本当の家族じゃない”と言われ、
その目に見えない変化にひどく戸惑った。
どうしてそんな質問をするの、――言えない疑問をおもいっきり深呼吸をして飲み込んだ。
「家で良かった…?貧乏な家で、私なんかがお姉ちゃんで…
良かったの?幸せなの?」
「――ねえちゃん?」
「あ、…ごめん。うん、なんでもない、なんか。あはは」
パッと手を離し、姉ちゃんは膝の間に顔を埋めて、両手で膝を抱えるようにして。
どうしたんだろうか、姉ちゃんらしくない。今まで俺は彼女の弱さを見たことがないから――
「なんか言われた?なんかあった?……どうかした?」
「雅!ありがとうね」
ありがとう、そこで終わらせて姉ちゃんはそれ以上は口にしない。
ならば俺はそれ以上を聞けない。聞いたらいけない…
月明かりで青白く光る肌は、美しくて逆に儚い。光の中に吸い込まれて消えていきそう。
―――好きだよ、愛してる。



