白は花嫁の色



うちの工場の前に腰掛けた。今にも壊れそうな昭和の名残、ぼろい工場、トタン屋根の質素で小さな工場。

――沈黙だ。

暗がりは目より耳が冴える。
闇の中にある静寂、言葉にはならない姉ちゃんの気持ちを探ろうと必死だった。


姉ちゃんは弓を射るように唇に孤を描き、俺を真っ直ぐに見つめる。

なぜか、その目が弱い。黒くて無垢で清潔な瞳。



「ねえ、雅は…うちの、家は幸せ?」

「――当たり前」


心臓が一回、大きく跳ねた。
勢いが良すぎて、血管に支障をきたしたのではないかと不安になるくらい。

一気に左の胸がおかしな音を立てはじめ、あまりに周りが静かなので、

姉ちゃんにも心の音が聞こえているのではないか、――そんなことを考えていた。


頼りない星空から落ちた風が、真っ直ぐな髪の毛をふんわりと囲う。

――隣から運ばれる甘い香りに包まれる。