とりあえず気持ちを落ち着かせ机に座り、今は受験勉強に取り組まなくては。
嫌いな英語だって気合い十分な今なら、はかどるはずだ。
……
……
――…あれ?
いつの間にかもう九時三十五分を過ぎていたのに、姉ちゃんの“いってきます”がない。
おかしい。一人で行ったのだろうか。集中し過ぎて聞こえなかったのだろうか。
不思議に思い、そっと台所に出ると、姉ちゃんがぼんやりと椅子に座っていた。
電気もついてなくて。…暗くて顔が見えないので感情が読めない。
――儚い姿が神秘的で、
思わず見惚れていたが、はっと我に返る。
様子がおかしいじゃないか。すぐにお花畑にトリップするのは悪い癖だ。
「姉ちゃん?」
驚かせないよう、真綿みたいに柔らかく包み込む音色で呼んだ。
“しのぶ”と名前を呼びたい気持ちを抑えて――



