「だって姉ちゃん以外の女なんか目に入らない」
「なにそれーあはは」
「よくシスコンなんじゃないかって、うん」
仄めかす発言をしたって姉ちゃんは笑う。
それは俺が弟だから。それ以上は何も思ってないから。
笑わないで欲しいと思う。
その笑顔が大好きだけど、違うんだ。
黙って俯いて、そして淡くはにかんで欲しい。
一瞬でもいい、俺の言葉に頬を色付けてくれたなら――――
―――俺は幸せなんだ。
寂しくない。
状況なんて自分の力でいくらでも変えられるんだ。
それに俺は自分の幸せより、姉ちゃんの幸せをまず叶えてあげたいんだ。
だからやっぱり王子様にならなきゃならない。
背をもっと伸ばして、頭良くなって、お金持ちになって――
月明かりの下、繋ぐ手の平に力を入れた。
――“好きだ”と魔法をかけて。



