「やっぱ切れてるよ、噛んだでしょ痛い?」
――俺は弟失格だ。
姉ちゃんはこんなにも弟を心配してくれるのに、
俺は姉ちゃんのふっくらした唇だとか、きつそうに生地が張った胸元にばかり目が行く。
覗き込む潤んだ瞳に、理性なんか飛んで行きそうになる。
例えば、よろけたふりをして唇を奪ったり、不可抗力だからと胸に触れたり、
――アクシデントを装ってみたくなる。
例えば、もうこのまま押し倒し組み敷いて、服を脱がしてみたくなる。
例えば―――
「ごはん食べよっか、食べれるかな?口痛むかな?」
「っうん!」
―――いけない。
告白するまでは弟で居るんだ。
あらぬ想像を巡らしてはいけない。頭ん中で姉ちゃんを汚してはいけない。
まだ中学三年生で、王子様ではないのだから。まだ告白はできないし、まだ男になってはいけない。
――まだ、我慢しなければいけない。



