駆け足で戻ると、ボッーと空を見つめるえりがいた。 「ごめん、待たせた」 「あれっ? 傘一本しかないの?」 「あっ……お金が無くて」 愛想笑いする僕を見る、えりのまなざしは鋭く尖っている。 「ふーん。なつってホントにエッチだよね。ヤダヤダ」 「ち、違う! どうなったらそうなるんだ!」 「ホントの事言えばいいのにぃー。えりさん、僕と一緒に相合傘して下さい……えー恥ずかしいなぁ……いいじゃないか」── えりは勝手に、一人二役で会話を進めた。 何だか楽しそうだから、置いて帰るかな……。