短編小説の集い。

 

ステージに立ってイルカと戯れる姿は幼稚にも思えたが、えりにはよく似合う姿だった。

水族館を出た頃、辺りは黄昏色に染まり、夜を迎えようとしていた。


「楽しかったねーなつ。また来よう」

「また来ような」


帰りのバスでは言葉を交わす事もなく、えりは僕の肩に寄りかかって寝息を立てた。

僕もえりに頭をかたむけ、支え合うように寝た。


「なーつ。氷見着いたよ」

「んぁ……」


寝ぼけながら、目をこすりバスを降りる。

寝ていた為、体感時間は瞬き一回ぐらいしかなかった。


行きに晴れていた空は、雲におおわれて、少し早い五月雨に見舞われていた。