現実が破壊されていく。
同時に脳も壊されてしまったのだろうか。
あたしは自分でも何を言っているかわからない奇声をあげて、髪を振り乱し裸足で走っていた。
逃げまどう大衆の波に逆らって反対方向を突き進む。
瞳からは際限なく熱い涙が溢れて溢れてとまらない。
銃声が途切れることなく響いてる。
ドーン
ドーン
ひとつ、ひとつ
命が終わっていく音がする。
あたしはなんで、こんな崩れた路地の端っこで丸くなって肩を震わすことしかできないのだろう?
反抗期という言葉が当てはまる傲慢な態度で生きてきたあたしは、戦争を前にすればたったひとりの小さな人間でしかなかったのだ。



