だけど事態は、何も理解していないあたしたちを置いてどんどん進んでいった。

日に日に貧祖になる食事

自分の身の守り方を教わったり

自分の想ったことを口にできなくなったり

青空に何機もの兵器が飛び交うようになったり

他県が爆撃されたというニュースに怯えるようになる。



そして俊介が、兵隊として国を守るよう任された。


なんて言えばいいのかわからなかった。
がんばって?
負けるなよ?

なんて、なんて言えばよかったのだろう。


呆然とするあたしを俊介はかつてないくらい強く抱きしめて“理子、いってくるな”と呟いた。

俊介の体温だけがあの頃と変わらず、暖かかった。