別にどうってことない。
ただコイツと廊下ですれ違ったさいに肩がぶつかっただけ。


コイツは、運が悪かった。
危害を加えた張本人の俺が、そう思う。

ぶつかった相手が俺じゃなければ、こんな風に廊下の真ん中で失態を晒すこともなく今日という1日をコイツなりに少なくともこの状況よりは平和に暮らせたのだろうに。


俺が「ヤレ」と呟いたとたん、俺を取り巻いている連中が懇願する男子生徒を殴りにかかった。




ただの言葉が、真っ黒に染まって血だまりのなかに落下していく。