―――あれ?居ない―――
バスルームから出ると、部屋には今日買って来たばかりの新しい琉球ガラスのグラスだけがテーブルにポツンと置かれているだけで、美咲の姿は見当たらなかった。
特に高級なホテルをセレクトしたわけではないけれど、このダブルの部屋は妙に広さを感じる。
俺は、迷う事なく心地良い風を部屋に流し込んでいる窓に向かった。
「美咲?」
もちろん、ベランダに居るであろう美咲を呼ぶ為だった。
「!ビックリしたじゃん!」
案の定、カメラを持ってベランダに出ていた美咲は、俺の突然の登場に本気で驚いていた。
「ごめんごめん。お風呂良いよって言いに来ただけだから。写真撮ってたの?」
俺は、美咲に近付いた。
「うん。やっぱり沖縄に来たら撮らないとじゃん?」
美咲は、手にしているカメラを見て、口元を緩めた。
「美咲は本当にカメラ好きだよね。修学旅行の時もかなり撮ってたけど、今回もそうとう撮るつもりでしょ?」
美咲は、もちろんと言い切った。