「えぇ~、なんでですかぁ~?」
相沢さんは、さっきまでのニコニコ顔を一気に不機嫌に変えた。
「高橋、おまえソレなんなんだよ?雨っていうといつもソッコー帰んじゃん。何があるワケ?」
佐藤は、またかと呆れ顔になった。
「うん、ちょっとね。次また誘ってよ。あ、俺タクシーで帰るからカサ持ってって良いよ。じゃ」
俺は、開けっ放しにしていた引き出しからカサを取り出して、佐藤に渡した。
「ちょっ、ちょっと高橋さん!」
オフィスから出て行こうとする俺を、相沢さんが納得のいかない声で呼び止めた。
「ごめんね」
けれど、俺は振り返って軽く手を上げただけで、立ち止まりはしなかった。
「アイツ、雨っていうと何が何でも急いで帰んだよ」
「え?何ソレ?何かあるんですか?」
「それがよく分かんないんだよなぁ」
2人が後ろでそんな会話をしているのを放っておいて、俺は急いで会社を出た。
もちろん美咲の為だった。