「おまえさ、美咲の事どう思ってんの?」
空人に聞かれた時、一瞬、頭が真っ白になった。
真由子でさえ俺の美咲への想いには気付いていないはずなのに、空人には何かを悟られたのかと思った。
けれど、そうではなかったらしい。
空人は、最期まで俺の事を変な目で見る事はなかった。
俺は何故、美咲が空人を選んだのかがずっと疑問だった。
一般的に見れば、あの高校に居たのだから、空人の頭もソコソコだったのだと思う。
けれど、何か目立ったモノを持っているわけではなかった。
むしろ空人は、俺達とは正反対の普通の世界の住人だった。
今思えば、美咲は空人のそんなところに惹かれたのかも知れない。
俺は、美咲の傍に居る為に、毎日、必死になって美咲側に居ようとしていた。
反対に、空人は最初から無理だと分かっていたのか、美咲の世界に無理に踏み込もうとはしないで、逆に美咲を自分側の世界に引っ張り出していた。
美咲に合わせる事しか考えていなかった俺には、あんなにコロコロと表情を変える彼女を引き出す事は出来なかったと思う。
それに俺は、空人の隣で素直な顔をする美咲を無理矢理空人から奪えなかった。
いつか空人にも宣言した通り、俺は何よりも美咲の味方だった。
美咲が空人を選んだのなら、それを壊すつもりはない。
俺の隣じゃなくても、美咲が笑っていてくれるのならそれで良いと思った。