「あぁ~、それにしても疲れた。隆太、私、寝ても良い?」
真由子のおかげで、すっかり寝不足になっている美咲は、小さく背伸びをした。
「良いよ。俺、起きてるから着いたら起こすよ。寒くない?上着貸そうか?」
棚から上着を取ろうと立ち上がった俺に、美咲は平気だよと手をヒラヒラ振った。
「隆太は昔からこうだよね。付き合ったら楽そう。ケイコが羨ましいわ」
美咲は、頬杖をついて久しぶりに聞く名前を口にした。
「懐かしい名前出すね?ケイコの事、覚えてたんだ?」
忘れかけていたその名前に、俺の方がビックリしてしまう。
「忘れるワケないじゃん。ケイコ、絶対私の事敵視してたよね。勝手に」
美咲は目を細めた。
「確かにそれはあったね。俺も何回か問い詰められた事あったし。ま、もう関係ないけどね」
記憶をたどる俺の隣で、少し倒した背もたれにその身を任せていた美咲が、急に起き上がった。
「え?隆太、ケイコと別れたの?」
美咲は、目を見開いていた。
「え?う、うん。とっくに別れてるよ。俺が大学に入って少ししてからかな?」
予想外の美咲の反応に、何故かこっちが押されてしまう。