「ただ、これがある事で美咲ちゃんが苦しむようならもちろん受け取らないで欲しいの。とにかく美咲ちゃんに、この事を知っていて欲しかっただけだから」
2人の顔が歪んで見える。
もちろん私の手に乗った指輪とピアスもボヤけていた。
「ソラ…」
飽和量を超えた私の目からは、とうとう涙が溢れた。
体から作られたばかりの涙は、その熱を失う前にドンドン頬を伝った。
「美咲さ…」
「コレ…いただいて…良いですか?」
私は、海人くんの言葉を遮って顔を上げた。
「去年、約束したんです…私の誕生日にプレゼントくれるって…私だけ約束守ってソラのを拒否するなんて出来ません…」
私は、短くなった自分の髪に触れた。
「美咲ちゃん、有難う。でもね…」
ソラのお母さんは、一度笑ってから真剣な顔になった。
「葬儀の時にも言ったけど、美咲ちゃんが空人の事を背負う必要はないの。その辺は分かってる?」
私は、その真っ直ぐな目に見つめられながら、無駄に多く頷いた。
「じゃ、もらってあげてちょうだい」
ソラのお母さんは優しく笑った。
思いもよらないソラからのプレゼントに、私はしばらく涙が止まらなかった。
けれど、ソラが私の為に用意したものは、これだけではなかった。