「今日は名護パイナップルパークと万座毛だね。ってまずは沖縄蕎麦、食べなきゃだけど」
移動のバスの中で真由子が日程表を広げた。
「万座毛だけで帰って良いよ。コレだけの為に修学旅行、来たんだから」
沖縄蕎麦やパイナップルは、はっきり言ってどうでも良い。
私はただ沖縄の海や空が撮りたかった。
「真由子、万座毛って何時くらいに着く?」
私は真由子が手にしている日程表を覗き込んだ。
「えーと…」
真由子が今日の予定を指で追っていると、バス内にマイクを通した声が響いた。
「斉藤空人!沖縄無事到着を祝して歌います!」
声の主は朝から崩れないテンションを保っているソラだった。
「お宅のカレ、妙に張り切ってるわね」
さすがに真由子が顔を引きつらせた。
「あんなヤツ、他人だ、他人」
私はカラオケで盛り上がるバスの中で、流れる景色を黙って見続けた。