「もう無いじゃん!買い出し班まだ!?」
間もなく整理券を印刷して戻って来た真由子は悲鳴を上げた。
材料が底をついたというのに買い出しに行った隆太達はまだ戻っていなかった。
「やっと休めるし」
仕事がなくなったサキは脱力すると共にケチャップとマスタードのチューブを置いた。
「隆太!今どこ!?」
若干、ツノが生え始めた真由子が携帯に向かって叫んでいる。
真由子を恐れたのか、その間にクラスメイトの女子達が並んでいる人に整理券を配り始めた。
―――今しかないかもー――
いや、きっと今しかない。
「サキ、行くぞ」
「は?」
俺は疲れた顔でぐったりしているサキの手を引いて出店を飛び出した。
「あ!空人!美咲どこ連れてく気!?」
気付いた真由子が隆太との電話の最中だというのに慌てて出店から体を乗り出した。
「どうせ隆太達帰って来ないとサキやる事ないだろ?すぐ戻って来るからちょっと休憩だって!」
俺は忙しさで追って来れない真由子を振り返りながら構わずサキの手を引いて走った。
「だってさ!真由子も少し休憩したら?」
解放されたのが嬉しいのか、サキはただ引いていた俺の手を握り返して真由子に笑いかけた。
「もう美咲まで!準備出来たら電話するからイチャついてないで戻って来てよ!」
美咲の悪ノリに観念したのか、真由子はそれ以上は何も言わずに出店の中に戻った。
俺達はそのまま校舎に逃げ込んで、少し上がった呼吸を整えた。