「難しいなぁ…」
俺は今後、どうやってサキと待ち合わせをしたら良いのか考えた。
人目につくところにサキを立たせておくとさっきみたいに注目の的になる。
それは俺も避けたい。
―――時間と場所、決めないで待ち合わせは不可能だし、毎回、家まで迎えに行くべきか…―――
「ソラ…」
悩む俺にさっきまで強気に主張していたサキが急に静かな声になった。
「もう手、放して良くない?」
そういえば急いでサキを人込みに引っ張って来てそのまま無意識に手を繋いだままだった。
「良いじゃん?別に」
俺は構う事なく繋ぐ手に少し力を入れた。
「こんな人、多い所で恥ずかしいでしょ?」
サキは頬を赤くしながら抗議をした。
相変わらずこういう事には慣れていないらしい。
「おまえ、頭良いくせに知んねぇの?人が多いから誰も気付かねぇんだよ」
サキはキョトンとした顔で俺を見返してから周りに目を向けた。
花火を見る為に歩くのもままならない人数の人でここは溢れかえっている。
他人の手なんて実際、見えたもんじゃなかった。
納得したのか諦めたのか、サキはそれ以上の文句を言わずに俺の隣を歩いた。