「その日、幼稚園の体験実習なんだよね。ほら、私ってば未来の幼稚園の先生だから」
そういえば短大に進学する真由子の将来の夢は幼稚園の先生だった。
「ああ、この前、申し込んでたヤツ?アレって花火の日だったんだ?」
美咲が残念そうな顔をした。
「うん、ごめんね。で、隆太は行くの?」
真由子の意味深な目が俺を捉えた。
―――合わせろって事ね―――
いつもニコニコしながら真由子は本当に抜かりがない。
「ごめん、俺もダメかな。今年はケイコと行くから」
逆らう事はやめて俺は真由子の思惑に便乗した。
「良かったね、美咲。空人と2人っきりじゃん」
満足気な笑みを含ませながら真由子は美咲をつついた。
「残念。また4人で見れると思ったのにソラと2人でか…」
美咲は不満気に空人を見た。
「なんか文句あんのかよ?」
空人がふざけてまた美咲の頭に手をかけようとした。
なんだかすっかりオツキアイをしている人になっている。
―――ま、美咲が良いなら良いんだけどね―――
俺と真由子は目を合わせてやれやれと息を吐いた。