「まったく、私はモノじゃないっての」
そう言いながらも美咲の目は柔らかかった。
「っつーわけでサキ、髪、伸ばしておけよ」
空人は俺から離した手を今度は美咲の頭に置いた。
「なんで私が髪、伸ばしておかないといけないのよ?」
空人に頭を撫でられる事に美咲は何の抵抗もないらしい。
「俺が美容師になった暁には1番最初にサキの髪、切ってやるからな」
まだ美容師になれると決まったワケでもないのに空人は自信満々だった。
「それって私、実験台にされるって事じゃん!絶対嫌!」
美咲は自分の頭にある空人の手を掴んで離そうとした。
「良いから良いから。楽しみに待ってろって」
空人はもう片方の手でまた美咲の頭をクシャクシャと撫でてから、今度は掴まれないように素早く手を戻した。
「あーもー!頭グチャグチャじゃん!」
空人の素早い動きで美咲は2回目の攻撃の手を掴み損ねて悔しがっている。
空人は満足気に笑いながらそんな美咲を見ていた。