「そんなの初めて聞いたんだけど…」
当然の事ながら美咲が1番、驚いている。
「ウチの母さん、美容師なんだよ。俺の頭もたまに母さんがやってくれるし、仕事してるとこ見てたらなんか良いなって」
空人はすでに将来の目標は掲げていた。
「へぇ、意外。空人でもちゃんと将来の事、考えてんだ?」
真由子の表情が驚きから感心に変わった。
「どういう意味だよ?」
空人が顔を引きつらせた。
「美咲、心配じゃない?」
真由子がニヤつきながら驚いたままの美咲を見た。
「本当だよ。全然、器用そうじゃないのに人様の髪なんか切れんの?」
鼻で笑った美咲に真由子は違うよと言いながら、続きを耳打ちする為に近付いた。
「美容師になったらいろんな人の髪とか触っちゃうんだよ?良いの?」
真由子は手をそえて美咲の耳にそう囁いた。