「隆太…」
安心したのか今までずっと黙っていた真由子が口を開いた。
「私、帰っても良いかな?さっきからこのケンカ、ノロケにしか聞こえないんだけど」
真由子は呆れた顔をした。
「大丈夫だよ、真由子。俺にもノロケにしか聞こえないから。っていうかノロケだから、コレ」
つられて呆れてみせる俺の隣で真由子が溜め息をついた。
このまま放っておいても自然に治まる事はないだろう。
そろそろ止めてやろうかと俺が一呼吸おいた時だった。
「良いよなぁ~、海人の兄ちゃん。美咲さんに好かれてて」
俺より一足先に海人の友人の1人が口を開いた。
「…なんだって?」
突然の第三者の発言に空人が止まった。
「本当だよな。うらやましいよな」
また別の友人が深く頷きながら賛同した。
「空人は贅沢なんだよ!前に美咲さん、かなり空人に惚れてるみたいな事、言ってたし…」
「海人くん!」
予想外の海人の暴露に慌てて美咲が止めに入った。
美咲に名指しされた海人はマズイといった顔でうつむいた。