ワタシの隣り

「…華、彩華。」



私の名前を呼ぶ声が聞こえる

目がなかなか開かなくて顔が見えない



…泰輔?



「泰輔?」



そう言った瞬間、目の前の顔の表情が少し歪んだ気がした



「…充。」



ハッキリと名前を呼ぶ声の顔が見えた。



「私…寝てた?」

「ぐっすり。」

「…車ってなんか眠くなるんだよね。」

「てかちょっと外出てみ。」

「嫌だ…」

「いーから。誰もいないから。」



助手席のドアを開けられ、私はしぶしぶ外に出た


そして目にうつったものは


「…海?」



青い海

ここ…

来た事ある



「運転まじ疲れた」



そんな事充は知らないだろう

きっと私を元気づける為にここに連れて来たんだろう

だから

それを思うとなんとなく
『泰輔と来た事がある』
とは言い出せなかった


でも…

身体は正直で

涙が止まらなかった


何故か切なくて

悲しくて

苦しくて