「・・大丈夫ですよ。

あたし矢野先輩から
離れませんから♪」


あたしはこの人を
愛すと決めたんだ。


だから。

揺れるな、あたしの心。


矢野先輩は
それを聞くと嬉しそうに笑った。


「・・・柳原って
やっぱりいい奴だな」


笑顔で言った矢野先輩。

けれど。
矢野先輩はどこか
悲しそうだった。

そして。


「・・・啓のとこ、行けよ」


「・・・・!?」


「・・好きなんだろ、あいつの事。


俺のせいで
大事な親友と好きな奴が
傷付くの見たくないから。


だから、行けよ」


矢野先輩は
真剣な表情を浮かべた。


「あたしは別に
長瀬先輩の事・・・・!!」


「・・・柳原。

お前の気持ちは
本当にそう思ってんの?」


「・・・!!」


違う。違う・・・!!


あたしは・・・・あたしは・・・・







長瀬先輩・・・・・!!



「・・・・ごめんなさい!!


あたしやっぱり長瀬先輩が・・
好きです!!」


「・・・そうか。


まだ空港に間に合うだろ。


早く行けよ・・・啓の所に。


顧問には
訳を言っとくからさ」


矢野先輩・・・・・っ


あたしは
とんでもない事を・・・・っ


たたたっ

あたしは駆け出す。


「・・・何やってんだろ、俺。


柳原の傍にいれたのに・・・


けど、
啓のために・・・・・・・」



(俺、前進むよ。)


「・・・空港まで、
お願いします!!


急いでください!!」


あたしは
タクシーを捕まえて乗った。



長瀬先輩・・・・っ




お願い・・・・っ



まだ行かないで・・・・っ



空港。


「・・・ちょっと待ってろ。

手続きしてくるから」


「・・・・・」


「・・・分かったよ、父さん。


二人で待ってるから」


長瀬先輩はお兄さんと
一緒に椅子に座って待つ。


長瀬先輩は
悲しそうに下を向く。