病室は静まり返る。

矢野先輩は窓の外を見つめる。


「・・・よく聞いてくれ。

今から言うことは
君にとって大事・・・

いや、
君の将来に関わる話なんだ」


医者は真剣な表情で、
矢野先輩を見つめる。


「・・・もう覚悟してますから」


(・・・柳原を助ける時から、
もう覚悟は決めてた。

俺の左腕の事を・・・・)


病室の外に
待つあたしと矢野先輩の
お母さんとお父さん。


すると。
矢野先輩のお父さんは
あたしに言った。


「・・・空ちゃん」


「・・・はい?」


そして。
とんでもない言葉を
あたしに言ってきた。


「・・・大地の傍に
居てやってくれないか?」


「・・・!!」


「あなた・・・!それは・・・!」


「分かってる・・・!

けど、見ただろ!?

あいつは空ちゃんが
来てくれた時に
目を覚ましたんだ・・・!


もし空ちゃんが
来なかったらきっと一生
目を覚まさなかったはずだ!


それに剣道がやれるか
分からない状況の時に

一人悩むはずだ・・・!!


頼む・・・!!
空ちゃん、大地・・・

あいつの傍で
あいつを支えてやって
くれないか!?」


矢野先輩のお父さんは
あたしに頭を下げる。

あたしの心が一気に凍る。


「・・・私からも、お願いするわ!

空ちゃん、お願い・・・!!」


続いて、
矢野先輩のお母さんまで
頭を下げる。


あたしは
いったいどうしたらいいの?





そして。
あたしは決断した。



そう・・・それは
一つしかなかった。









「・・・・はい」


「「・・・・!?」」


「・・・私、矢野先輩の傍で

矢野先輩を支えます」



花束の香がする。


「・・・・嘘だろ?

今の柳原の言葉・・・」


(・・・・柳原は
大地のために・・・。

俺も親友のために・・・
身を引くか・・)


「じゃあな、柳原・・・」


さよなら。


長瀬先輩。