「矢野先輩・・・」


あたしは矢野先輩を見下ろす。


それを見た矢野先輩の
お母さんとお父さんは
互いに見つめ合う。


「じゃあ、
お母さん先生呼んで来るわね」


「父さんは、
何か飲み物買ってくるから。

二人で話していなさい」



何か気を遣っている
ような感じだった。



「あ・・あの・・・待っ」



・・・バタン。


二人は病室から
去って行った。



・・・しーん。


病室はまたしても
静まり返る。


「・・・座れよ」


矢野先輩の言葉が
大きく聞こえる。


「う・・うん」


あたしは
弱々しくそう返事をすると、
椅子に腰を下ろす。


緊張がさっきよりも、
大きくなった。


「矢野先輩・・・」


「・・・何?」


「・・ごめんなさい・・・。

あたし・・・あたしのせいで・・」


一気に不安になった言葉を
矢野先輩にぶつける。


あたしを責めて・・・

責めてよ・・・。


誰も責めないなら、
矢野先輩が・・・
あたしを責めて・・・。


「・・・お前のせいじゃねーよ」


「・・・けど!!


あたしのせいで
矢野先輩は・・・っ」


矢野先輩の一言に
あたしは罪悪感で押し潰された。


けれど。


矢野先輩は窓の外を
見ながらあたしに優しく言った。



「・・・俺はただ、
好きな女を守っただけだ」


そう呟く矢野先輩。


「・・・っ」


矢野先輩の言葉が、
あたしの心をより
強く締め付ける。


あたし矢野先輩を
フったのに・・・


それでも・・・あたしを
思ってくれてるのに。



あたしは・・・あたしは・・・



矢野先輩の気持ちに
答えられないなんて・・・


そんなのすごく最低な女だよ。


矢野先輩・・・・


矢野先輩・・・・っ


「・・・本当はさ」


「・・・!?」


「これでお前が、俺の方を
見てくれるんじゃないか・・って


そう期待してた・・」