「今…キス…」


朱希の足音が聞こえなくなっても柚葉の顔は真っ赤で固まっていたなんて知る由もない。


「ただいま」


自宅に入ると違和感を感じ、見慣れない靴に眉をしかめ台所を覗いてギョッとした。


「お母様って若くて朱希先輩のお姉様かと思いました〜」


「あら!!ヤダ!!嬉しいこと…って朱希?」


「なにやってんの?」


「何ってお話ししてたのよ?朱希がなかなか帰らないから。また柚葉ちゃんとこ行ってたの??」


「ちげぇよ…お前だよ」


さっき送ってやった意味なかったんじゃねぇ?


「あ!!あたしですか!?」


「お前以外いねぇだろ!?勝手に人んちに来てんじゃねぇよ!!何で俺んち知って……いたぁ!!」


乱暴な言葉を掃き捨てる朱希を母はスリッパでスコーンと殴っていた。