学校からそれほど遠くはない彼女の家に着いて、荷物を渡すとそのまま立ち去ろうとした―…
「先輩…」
「…はぁ?」
玄関先でうずくまってしまっている。
顔は真っ青で、息も苦しそうに肩を大きく揺らしながら。
「おい!?どうしたんだよ!?」
駆け寄った俺の手を頼りなく握ると、その冷えきった体温に驚いた。
春だと言うのに、まるで真冬のような冷たさだった。
「どうしたんだよ!?大丈夫か!?」
「…ごめんなさい、大丈夫です…」
ほんとに調子悪かったのか?だとしたら悪い事したよな…―
「…っいしょ」
「え!?せ…先輩」
歩き兼ねている彼女を、とりあえず抱き上げて玄関を開けた。
「鍵開いてるなら誰かいるんだろ?すいませーん」
何度か声を張り上げてはみたけど誰かがいるような感じはない。
「いねぇのかよ…」
「お兄ちゃん…いるはずなんだけど…」

