部屋の前に着いて深呼吸。

あの美しい顔にも、
低いセクシーな声にも
絶対に動じないように!


−コンコン…

「はい?」

『愛美、ですけど』


「どうぞ…」


カチャ…キィ−


Ryuseyは部屋の真ん中に
あるアンティークなソファに
腰掛け、脚を組みこちらを
見ていた。

映画のワンシーンを見ている
ような錯覚に陥る。

美しすぎる佇まいは
人形のよう。

やっぱり足が竦む。


でもRyuseyには悟られた
くなかった。


私は目を合わせないように
嫌味っぽく言った。


『いかがですか?王様。』

するとRyuseyは
立ち上がりゆっくりと
こっちに向かって来た。

(うっ、くる〜…(泣))

息ができないほどの緊張。
それをおもしろがるかのように
ゆっくりなめ回すように私を
見る。


「馬子にも衣装だ。」

『――…っ』

そうくると思ったよ、
でも緊張で言葉が出なかった。


「いや、でも本当に、やっぱり
僕が見込んだだけのことはある。
面接にきたときの、育児疲れした
やつれ感はなくなって、
どこからどう見ても美しい
和服美人になったね。」


お世辞なのはわかってるよ

でも、なんだか一瞬だけ
Ryuseyが人間らしく
見えた気がした。

まぁ、人間なんだけど。
いつもRyuseyは人形
みたいに感じてしまうから。