くちびるの純情 薬指の約束

あれは確か小3の夏

今よりも体が弱かった純也はよく入退院を繰り返していて、病院に会いに行くことが多かった

その時の入院は本当に純也の命に関わるもので、終業式の後、夏休みの宿題を届けに病室に行くと、そこは戦場だった



人形みたいな純也を見ているのが辛くて、悲しくて、涙が止まらなくて気がついたら駆けだしていた

真っ白なシーツが靡く屋上で最初で最後

声をあげて泣いた

何故だかわからないけど溢れ出した涙が止まらなかった



どれくらい泣いていたかなんて覚えていない

「はい」

差し出されたハンカチ

振り向いた先にいた少し年上の男の子

「大丈夫。きっとパパが助けてくれるから」


そう言ってニコっと笑った

「え?」

パタパタと中から聞こえる足音に返事が消された