「あっ、とれた!」


満足げにほほえみながらあたしたちのもとへとやってきた。

優介は、花びらをつまんでみせびらかす。


「みてよ、やっととれた」


「ユースケ、あんた、子供」

夏織が指でそれをはじいた。
ナイスタイミングで風がふき、夏織の細い指にはじかれた花びらは、くるくると舞っていった。


「ああ!カオル、おまえどうしてくれんだよ、おれの苦労!!」


「帰ろっか、リカコ」


背後で夏織に文句をいい続ける優介は気にせず、あたしと夏織は帰路につく。


ふわっと、風がふいた。
なまぬるい風だ。


春がきたというより、夏の風にちかい。