梨花子は、空中にジャンプした。


手をのばし、ひろげ、ぎゅっと握りしめる。


「あ」


そっとひらいたあたしの手には、白とピンクの桜の花びらがきれいな形のままでのっていた。



「みて、花びらとれた」


「あ、いいな。ちくしょう、おれ全然むり!」


そう言って優介は、何度もジャンプする。


長身で年齢より大人っぽくみられる優介が桜の木の下で花びらをつかまえようとしている姿がおかしすぎてあたしは腹をかかえて笑った。


「ユースケ、おかしいよ!そんな、マジ顔で、変!!」


ついには地面に座り込んでしまったあたしのところに、笑いながら夏織がやってきた。


「なーにやってんの」


「だってカオル、見てよあれ」


優介を指差した。
いつのまにか優介は、小学1年生くらいの男の子たちと一緒になって花びらをつかまえようとしていた。


あたしはそれをみてさらに笑い、夏織も一緒になって笑った。