【完】アニキ、ときどきキス

ついつい負けて振り向いてしまう。


「・・・何よ」


新君を見上げ、睨み付けた。


「いや、その・・・・・・」

私に睨み付けられた新君は後ろに後ずさりして、困ったような表情を浮かべる。


「私は、エスパーなんかじゃないんだから」


「え?」


「何も言わなくても気づいてくれる?
分かるわけないじゃない。
今だって、昔だって・・・新君のことは分からないだらけだよ」


私は新君に近づき、そっと手をとった。

お酒の匂いが鼻につく。


「どうして、この仕事してるの?」


「・・・・・・」


「言わなきゃ分からないんだよ。教えて?」


「・・・・・・」


それでも新君は黙ったままだった。