【完】アニキ、ときどきキス

私の後を続くように新君も後を追ってくる。

新君が奥で寝ている遥を気にしながら静かに扉を閉めた。


「北原さん、ありがとう。
本当に来てくれたんだね」


「うん、気にしないで。
私もこの方が安心するし。
遥も一人で待つよりは寂しくないでしょ?」


暗闇の中を歩く。

新君は何も言わずに私の後ろを歩く。


「北原さん」


新君が私の名前を呼ぶ。

私は振り向かずに歩みを進める。


「北原さん」


それでも私は歩みを進める。


「北原!」


新君はしびれを切らしたかのように、私の苗字を呼び捨てで呼んだ。


悔しいな・・・いつもと違う呼び方されただけなのに・・・・・・


たったそれっぽっちのことで新君のことが好きなんだと認識する。