鍛冶町のアーケードを出たところで、後ろから新君の声が聞こえた。


「北原さん!待って!」


後ろを振り向くと形相を変えた新君がどんどん近づいてくる。


「や・・・・・・だ。
なんか怖い!」


私は必死で逃げたけど、簡単に追いつかれてしまった。

腕を捕まれる。


「ハア、ハア・・・・・・新君早すぎ。
変だな、私の方が足早かったはず、ハア、なんだけどな」


「ハア、何年前の話ししてんだよ。
ゲホ、ていうか何でここいるわけ?」


「新君に話しがあって、それで調べて来たの」


「じゃあ何で逃げたんだよ」


私は言葉を詰まらせた。

新君と女の人が仲よくしているのが悔しくて逃げたなんて言えない。


しばらく考えて、私が新君に返した言葉は、ホストをしている新君に対してのちっちゃな反抗。



「・・・・・・この仕事じゃなきゃ無理なほど生活苦しいの?」


「・・・・・・うん。
ちょっと色々あって、この仕事じゃなきゃキツイ」


新君は私の腕をパッと離し、背をむけた。

胸が痛んだ。