「なにか用事?」


遥が私の顔を不思議そうに覗き込む。


「ちょっと、お兄さんにお話があってきたんだけど、今留守?」


「アニキは仕事に行ってるよ」


「仕事場所ってどこなのかな?」


「・・・・・・」


遥は昨日と同じように視線をそらし、口をつぐんだ。


「あのね、私お兄さんの力になりたいの。
教えてくれるかな?」


遥はじっと私の目を見つめ、部屋の奥に入ると、何かを手にして戻ってきた。


「これ」


遥が私に渡したのは名刺だった。


「シン・・・・・・brilliance」


「シンはアニキのお店での名前。
それじゃあ、アニキのことよろしくね」


遥は唇の端を小さくあげ微笑むと、パタリと扉をしめた。