【完】アニキ、ときどきキス

時計を見ると、もう9時を過ぎていた。


「お兄さん、まだ帰ってこないの?」


台所でコップを洗っている遥に話しかける。


「うん。
アニキはいつも朝方に帰ってくるから」


「朝方?」


遥はタオルで手を拭きながら、寂しそうに笑った。


「アニキ、私の為に必死で働いてくれてるから。
文句なんて言えないし」


「お兄さん、何の仕事してるの?」


「それは・・・・・・」


遥は気まずそうに視線をそらした。


その時、外の方でカンカンカンと階段を勢いよくのぼる音が聞こえた。

そしてその直後、玄関の扉が勢いよく開いた。