家に帰ると母さんが食事の支度をしていた。

楽しそうに食事支度をする母さんの後ろ姿。

俺は邪魔にならないように、後ろの食卓テーブルに座り、話しかけた。


「ねえ母さん。
なんで母さんは、俺に父親が必要だと思ったの？」


「ん？新が寂しくないようによ」


トントントンと心地よく、まな板を叩く音が響く。


「俺のため？」


「そうよ。
こうして、一緒にいる時間が前より増えるのよ」


ニッコリと微笑む母親を見ながら、北原さんの言っていた言葉が頭をよぎる。



『ねえ、新君。やっぱり一人より二人がいいよね』



「・・・母さん、俺、七瀬さんと仲よくなれるかな？」