電話に出ても、上手く話せる自信がなかった私は通話ボタンを押せなかった。

留守電にはこんなメッセージが入っていた。


『今日は来ないの?遥寂しがってたよ。
せっかく俺も休みだったのに。
・・・・・・何かあった?心配だから折り返し連絡くれよ?』


心配だから、なんて。

私以外の人と平気でキスするくせに。



新君はずるいよ。


・・・・・・でも、遥には悪いことしちゃったな。

私を待っていてくれていたのかと思うと、裏切ったような気がして申し訳なかった。


いつもと変わらない、眠そうな表情の遥を確認して、私は顔の向きを前に直す。


山田先生がハンドルを握りながら、私の様子をチラチラと確認する。


「そういえば、昨日」


そこまで言って山田先生が口をつぐむ。


「え?はい。なんですか?」


「・・・・・・聞いてもいいですか?昨日のこと?」


「・・・・・・はい。
全然平気ですよ?」


私は作り笑いを浮かべながら答える。


本当は思い出したくもないな・・・なんて情けなくて言えない。