遥と新君の足音が消えると、穂高が布団から出てきた。


穂高は何も言わず、上半身を起こし、遥と新が出て行った病室の扉を見つめた。

私はベッドの脇に置いてあった椅子に静かに座った。


「北原先生は行かないんですの?
みんな学校で待っているでしょう?」


「戻らないよ。
穂高の側にいたいから」


「・・・・・・」


穂高は私の言葉に少しだけ指を動かし、俯いた。


穂高には色々聞きたいことがある。

だけど、まずはこのことを聞きたかった。


「ねえ、穂高ひとつ聞いてもいいかな?」


「・・・・・・なんですの?」


「その頬のアザ、私のせいにしたかったのはどうして?」


穂高は何も答えず、布団を両手でギュウっと握りしめている。