【完】アニキ、ときどきキス

遥が私の顔を見る。

私は遥の目を見て頷き、前の扉をガラリと開けた。


「先生どこにいくの?」


私と遥の行動が分かっていない子ども達が、口々に質問する。


「私が戻ってくるまで自習にします。
補欠の先生を頼んでいきます」


「行ってらっしゃい」


直太朗だけは分かっているようで、笑顔でヒラヒラと手を振る。


私は直太朗に向かって微笑み、教室を出た。

遥も私に続くように、後ろの扉から出た。


「北原先生」


遥が私の横につき、肩を貸す。


「ありがとう」


私は頼るように遥の肩に腕を回し、階段をケンケンと必死で降りた。


階段を飛び降りる衝撃が痛めた足に響いてズキズキする。

だけど、そんなこと気にしてる余裕なんてなかった。


早く、穂高のところへ。

その気持ちの方が強かった。



私が守らなければいけないのは、穂高だったんだ。