「てか、凄く貴重だぜ、これ。」


あっという間に隠そうとしたラブレター的なものは何故か悠斗に取られてしまった。


宮田 旭。

この春、地獄のような受験勉強をするわけでもなくそこそこの成績でそこそこの高校に入学した。

特に目立つこともせずやっと学校に慣れはじめた6月。

これから先も疑う余地もないほど平凡な生活を送っていくと思っていたのに。


「おい、旭」

隣で毒づいている悠斗。

こいつは中学から同じで高校もクラスだったため何となく一緒に行動している。

「なあ、開けてみようぜ。」

悠斗は日に焼けた手のなかにある封筒をピラピラさせながら言う。


「なんで悠斗が決めるんだよ。」

「だってラブレターだぜ?この携帯電話が普及してるご時世に!」


悠斗は新しく買ってもらったおもちゃを目の前に与えられた子供のようにはしゃいでいる。


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