杉本の話し方は人を引きつけた。
目力、時々見せるはにかんだ表情、絶妙な間。
飽きさせない魅力を心得ていた。
話の内容はたいしたことはないのだけれど、展開のさせ方が素晴らしい。
いつしかペースに乗せられ聞き入ってる。
そんな自分に気がついた。
安っぽい香水を匂わす、隣に座っているおば様の馬鹿笑いに、ふと我に帰えり救われた。
アキラはつまらない質問を杉本にいくつかしてみた。
話を中断させ、どうでも良い質問を何度か繰り返す。
狙いは杉本のペースを乱すこと。
それだけでよかった。
どうでも良い質問は、それまで杉本の不思議な話術に引き込まれていた部屋の空気を一変させた。
明らかに雰囲気が変わる。
声のトーンは下がり、ソファから前方に身を乗り出し、
腕を大げさに振り、熱く語っていた杉本の顔から笑顔が消えた。
今は深く腰掛け天井あおぐ。
店の奥、パーテーションが見える方に視線を向けた。
と同時に、その奥から二人の男が現れ、
アキラの両腕をそれぞれが抱え、入り口から外へ放り出す。
まるで易いドラマの一場面のようだ。
出される瞬間、左の男がアキラの脇腹に膝を入れてきた。
結構痛む。
外は霧雨が降り始めていた。
よろけるように膝を着く。
「晩飯食い損ねた」
そんなしょうも無いことをつぶやきながら空を見上げた。
火照った顔に雨が気持ちよく当る。
立ち上がり、パンツの膝部分をはたいた。
誰かが傘をさしてくれている。
振り向くと、ボブスタイルが素敵な女性がチーフを差し出してくれている。
両手を広げ手を振りそれを制する。
「いいから使って」
今でもはっきり覚えている。
透き通るようなきれいな肌をした彼女の微笑む顔を。
あれから何度かあの店に足を運んだが、
彼女の姿を見かけることはなかった。
目力、時々見せるはにかんだ表情、絶妙な間。
飽きさせない魅力を心得ていた。
話の内容はたいしたことはないのだけれど、展開のさせ方が素晴らしい。
いつしかペースに乗せられ聞き入ってる。
そんな自分に気がついた。
安っぽい香水を匂わす、隣に座っているおば様の馬鹿笑いに、ふと我に帰えり救われた。
アキラはつまらない質問を杉本にいくつかしてみた。
話を中断させ、どうでも良い質問を何度か繰り返す。
狙いは杉本のペースを乱すこと。
それだけでよかった。
どうでも良い質問は、それまで杉本の不思議な話術に引き込まれていた部屋の空気を一変させた。
明らかに雰囲気が変わる。
声のトーンは下がり、ソファから前方に身を乗り出し、
腕を大げさに振り、熱く語っていた杉本の顔から笑顔が消えた。
今は深く腰掛け天井あおぐ。
店の奥、パーテーションが見える方に視線を向けた。
と同時に、その奥から二人の男が現れ、
アキラの両腕をそれぞれが抱え、入り口から外へ放り出す。
まるで易いドラマの一場面のようだ。
出される瞬間、左の男がアキラの脇腹に膝を入れてきた。
結構痛む。
外は霧雨が降り始めていた。
よろけるように膝を着く。
「晩飯食い損ねた」
そんなしょうも無いことをつぶやきながら空を見上げた。
火照った顔に雨が気持ちよく当る。
立ち上がり、パンツの膝部分をはたいた。
誰かが傘をさしてくれている。
振り向くと、ボブスタイルが素敵な女性がチーフを差し出してくれている。
両手を広げ手を振りそれを制する。
「いいから使って」
今でもはっきり覚えている。
透き通るようなきれいな肌をした彼女の微笑む顔を。
あれから何度かあの店に足を運んだが、
彼女の姿を見かけることはなかった。
