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『…廉』
「…あ?…あ、悪ぃ、聞いてなかった」
何の話してたっけ?
記憶にねぇ…
俺があいつのほうを向くと
急にケータイを取り出して何か操作をし始めたのが見えた
『はい』
渡されたのは
消去しますか?の文字が画面に浮かんでいる小さな機械
こんなものに俺は恐れるのかというほど
小さな、小さな機械
『メモリーはこれしか残ってないから…自分で消してしまえば完全に消えたことが分かるでしょ』
「…お前『美紗緒』
俺の後に続ける言葉はこいつの声に消された
『最後に…美紗緒って呼んでくれたら
行っていいよ』
本当に好きな奴を手放さなきゃいけない気持ちは
十分に分かる
…だから
「ごめん…美紗緒」
俺は教室を飛び出した
『あんたなんか…だいっ嫌いよ、馬鹿!』
それは
今までの彼女なりの
償いだったのかもしれない