俺はなるべく勘付かれないように平静を装っていた
だけどまさか
春華の口から『榊』という言葉が出てくるとは思わなかったから不自然な受け答えをしてしまった
…俺は1人でこんなに悩んでいるのに
手を繋ぐだけで真っ赤になって恥ずかしがる春華を見ると
本当に俺だけのものにしたくなって別の意味で悩んでしまった
あいつと付き合う前に
春華を抱きたい
めちゃくちゃにぶっ壊して
いつまでも俺だけしか見ないようにしておきたい
だけど今の俺には
そんな時間も度胸も無い
なにより、春華の悲しそうな顔を見たくない
嫌われたほうが俺にとってもけじめが付くと言うのに
心の奥底では
別れを告げた後でも、俺の事を思っていて欲しいなんて甘いことを考えている
だから
最後にキスをした
今までの想いを全部こめて
この苦しい気持ちが分かってほしくて
最後の…思い出にしたくて
「…ごめん」
やっぱり俺は
春華を手放すなんて考えられない
でも…無理なんだ
春華を目の前にして別れを告げられるはずもなく
明日、榊に気づかれないようにしながら過ごそうと思った
だけど
それも長くは持たないだろう



