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「ごめん、和真(カズマ)君
少し遅れて…」
『まだ十分な時間だよ
行こっか』
黒髪を軽くアレンジしてるおしゃれさんが
ついこの間から私の彼氏だなんて、未だに信じられない
きゅっと繋がれる手が自然すぎて
思わず手を引っ込めたくなるのを押し留めた
『麗って、呼んでもいい?』と言われたから
うんと頷いて
それからずっと麗と呼ばれている
なんだか凄くこそばゆい
「和真君
ちょっと、恥ずかしい…かも」
『そう?俺は嬉しい』
麗の柔らかそうな頬が美味しそうに色付く
この初心な反応が男心をくすぐる事に彼女はまだ気付かない
気付かないまま、捕らわれていく
「和真君の髪は綺麗だよね」
『何を唐突に…
俺が綺麗だって言うなら、麗は今頃女神様だね
それくらいありえないよ』
それは自分を謙遜する意味と、彼女自身の美を否定する意味を含んでいる辺り
なかなか頭がまわる人物である
少々不機嫌になった彼女と
そんな彼女が可愛くて仕方が無い彼を揺らすのは
ゆっくりと月日を育んだ
暖かく、柔らかい春の日差しだった
END